2013年11月11日月曜日

雑感-「落葉」(日野啓三)

作者は2000年元旦に慶応大学病院の脳神経外科に入院。
脳の中心部の動脈瘤が破れて、クモ膜下出血を起こしたのだ。

作者の脳を開頭した担当の医師が術後こう言ったという。

「頭を開いたら、落葉がつまっていたよ。とてもいっぱい、どうしてあんなに落葉だったのだろう」

・・・私の切られた頭蓋骨の切り口からこぼれ落ちて床にたまった落葉の小山さえこの医師なら本当に見たかもしれない。それは私の運命に対する比類ない詩的洞察であり、私は頭を開いて(心ではなく)、正体をさらしたわけだ。・・・

(p11-12)


手術後退院して自宅静養中に書かれた短編の一つ。
初出は2000年すばる12月号。
作者は2002年10月14日に死去している。


落葉降る下に最後の人歩む