2012年12月21日金曜日

2012年12月12日水曜日

2012年12月9日日曜日

2012年12月7日金曜日

復讐

子の親に加ふる復讐暗暗と血の伏流ゆ匂ひたつべし

偶然

身辺の事象をただに偶然と念う者には偶有の苦

共時性

共時性の大きな腕に捕らわれたように悲劇の幕は上がる

地に足つかぬ者

ふらふらと地に足つかぬ者みつけ死神は呼ぶ こっちこっち

2012年12月3日月曜日

2012年12月2日日曜日

リスク

「これからはリスクを取らない人間は生き残れない」だが長生きする

2012年11月29日木曜日

2012年11月21日水曜日

2012年11月20日火曜日

2012年11月19日月曜日

2012年11月18日日曜日

2012年11月15日木曜日

2012年11月14日水曜日

2012年11月13日火曜日

2012年11月11日日曜日

毛布

帰らざる日々を毛布と畳みおく

シニア

若者がシニアと平板アクセントでいふときどうしても「死にや」と聞こゆ

2012年11月10日土曜日

2012年11月9日金曜日

2012年11月7日水曜日

2012年11月6日火曜日

2012年11月5日月曜日

2012年11月4日日曜日

優先席

疲れたる若者並んで眠りゐる優先席を見れば悲しも

冬隣

表から乾ひて候ふ冬隣

癒し

いやしくもいやしいやしいいやらしいいやはやいやでもいやおうなし

火星

火星より飛び来たるといふこの命いつかふたたび星へと還らん

2012年10月31日水曜日

2012年10月28日日曜日

爽籟

爽籟やいろんな物体ぶらさがり

波の花

わたつうみの波の花をば染めかねて八十島とほく雲ぞしぐるる 後鳥羽院


海辺の時雨の景であるが、その実は恋歌の層をもあわせ持つ。時雨である男は、波の花である女を染めようと降りしきるが、それは本来的に叶わぬ恋であり、ただ虚しく降りそそぐだけだ。このように四季と人事を照応させる詩法は和歌の基盤であった。
後鳥羽院は俊成の弟子であり、定家の相弟子であるが、職業歌人である彼ら親子との違和を感じていたと丸谷才一は指摘する。とりわけ和歌の純粋芸術化を推し進める定家に対して、後鳥羽院はあくまでも和歌を宮廷における礼儀と社交の道具としてとらえようとした。丸谷いわく、「和歌はめでたく詠み捨てるのが本来の姿である」と。
<八十島>は数多くの島という意味でもあり、地名でもあり、歌枕でもある。しかし、例の小野篁の<わたの原八十島かけて漕ぎ出でぬと人には告げよ海人の釣舟>の歌によって八十島はあたかも隠岐であるかの意味合いを帯びる。とすれば、隠岐に流された廃帝が時雨であり恋愛であり政治であることがこの島々から遠く離れたところで行われていることに激しくしめやかな憤懣をいだいているという第三層の読みも可能となる。丸谷いわく、「ここには古代的とよぶのがふさわしい壮大な悲劇があつて、しかもその悲劇は、海の叙景と、人間の恋愛と、帝王の政治的挫折とを三重の層として持つてゐるのである」と。
新々百人一首53

2012年10月27日土曜日

2012年10月25日木曜日

2012年10月24日水曜日

2012年10月23日火曜日

2012年10月22日月曜日

2012年10月21日日曜日

みれどもあかぬ君

春がすみたなびく山の桜花みれどもあかぬ君にもあるかな 紀友則


字面だけを読むと何のこともない歌である。霞がたなびく山の桜花のように見飽きない君であることよ、と。しかし、丸谷才一が指摘しているように、『源氏物語』の「浮舟」の名場面と重ねてみると一挙に感受性の視界が広がるであろう。匂宮が半ば強引に浮舟と関係したあと二人で春の一日をすごしている場面だ。ひとりで見るとわびしく思える暮れ方の山際も時間が止まって欲しく感じるほど見ても見ても見飽きない。そして愛する人も。同じ体験をしたことがあるならば、いわずもがなであろう。それが桜のときならなおさらである。
<みれども>というのは男女の性的関係の成就を当然含意している。二人の運命は霞のような不確かな蓋然性に覆われており、それゆえに女ははかない桜の美を体現する存在たりえるといえる。
新々百人一首67

昔ながらの山桜

ささなみや志賀の都は荒れにしを昔ながらの山桜かな 平忠度


『新々百人一首』の百首の中で最大の40ページがこの一首の解説に割かれている。内容・分量からしてこの作品の肝の部分であろう。歌そのものよりも俊成がなぜ「千載和歌集」にこの歌を読人しらずとして採ったかという<謎解き>にかなりの紙面が費やされており、それがなかなか読ませる。没落する平家と隆盛する源氏という政治的大混乱の真只中に、歌謡マニアである(つまり歌に関心のない)後白河院が俊成に勅撰集の院宣を下したことの不思議を丸谷才一は、配所で無念の死を遂げた崇徳院(俊成の天分を見出した人物)の怨霊慰撫のためだと解く。そして、忠度の歌を読人しらずという扱いで勅撰集にいれたことは鎌倉の源氏に対する遠慮と牽制であり、それは後白河院からの政治的要請であろうと推測している。
『平家物語』の「忠度都落」での忠度と俊成のやりとりは、日本文学史上屈指の感動的シーンであり、薩摩守忠度の名前はこれによって不滅のものとなった。無賃乗車がサツマノカミという隠語で呼ばれたのもたいていの日本人がこの美談を常識として知っていたからこそ成立したのであるが、残念ながら今日ではその文学的常識は失われている。忠度が平家興隆の時代に古代の都の廃墟に平家衰亡の未来を重ねて見たように、われわれはこの歌に日本語本体の衰亡を読み取らなければならないのかもしれない。
新々百人一首15

2012年10月20日土曜日

黒髪のみだれ

黒髪のみだれもしらず打伏せばまづかきやりし人ぞ恋しき 和泉式部


丸谷才一いわく、「ちょうど別の文明において、均整のとれた肉体美が尊ばれるように、この時代には床に届くほど長い、瀧のやうな髪が男心をとらへた」のであり、「女は男ほしさに悶々とするあまり、髪の乱れるのもかまはず身を伏せる」のである。王朝文学にはつねに暗喩として語られる肉体とエロスがあり、<黒髪のみだれ>は女体の性的な<みだれ>であり、<打伏せば>は当然その昂ぶりによるものであり、<かきやり>は女の封印された愛欲を開示せんとする男の熱情と技巧を暗喩しているというわけだ。そして、この歌は回想であるとともに、その再現を強く念ずる呪術性に満ち満ちている。王朝男性は女の自涜の場面すら空想したのではないか。
いわく、「古人が慎みぶかい口調でどんなエロチックなことを述べてゐるかは、丁寧に読みさへすれば容易に理解できるはずである」と。
新々百人一首76

2012年10月19日金曜日

待つ夜にむかふ

うれしとも一かたにやはながめらるる待つ夜にむかふ夕ぐれの空 永福門院


万葉以来、男の訪れを待つ女心は和歌の好題目であったが、それはひとつには男を呼び寄せる呪術的な効果が期待されたのであろう。ところが、王朝文化においては、待つ女のイメージを好んで歌に詠んだのはむしろ男性であり(たとえば定家の「来ぬ人をまつほの浦の」の歌)、「新古今」時代の男性歌人というのはいわば「名女形」のような存在であると丸谷才一はいう。
この永福門院の歌は、男が久しぶりに訪ねてくる日の待つ女の心を女の立場で詠んでいる。期待や喜びはもとより、不安、恐れ、悲しみ、あるいは危惧といった微妙な多層的な感情がたくみに表現されている。王朝的男性歌に比べると近代的ですらある。丸谷いわく、「厳密に言へば、女はまだ待つてゐない。ただ『待つ夜にむか』つてゐるだけだ」と。
新々百人一首73

2012年10月17日水曜日

袖ふるをとめご

をとめごが袖ふる山の瑞垣の久しき世より思ひそめてき 柿本人麻呂


鎌倉、室町のころは人麻呂の代表作だったこの歌がなぜ明治以後顧みられなくなったのか。それは、丸谷才一によれば「リアリズムといふ近代百年の趣味の支配」によるものであり、「賀歌はリアリズム理論によって憫笑されながらかつての栄光を失ひ、そして序詞を用ゐて歌を詠むことなど誰も試みなくなつた」のだと。
ひるがえって王朝時代の歌人たちは「青々と茂る長い瑞垣の向うで袖を振つて舞ふ、布留の社の赤い袴の乙女たちに対する男の恋の久しさをもつて、この世界の長久の比喩としたのであらう」。そして、彼らは緑の(自然の)垣の中に蠱惑的に揺れる赤い(肉なる)袴と白い(聖なる)袖という、まさに色の力に眩惑されて聖なるものとの交合というイメージに呑みこまれながら神話の力の源泉に触れたのであろう。もちろん、歌垣の肉体的妄想もそこにしっかりと重なってくる。
新々百人一首65

2012年10月14日日曜日

2012年10月13日土曜日

中三時代

人生の最良の日々は中三の一学期までと言ふ高校生

2012年10月11日木曜日

2012年10月10日水曜日

平等

一頭の牛を解体するやうに毀たれて人は平等である

コンマ5秒

いらないと言つたとたんにコンマ5秒遅れの俺は不愉快となる

2012年10月8日月曜日

2012年10月6日土曜日

2012年10月3日水曜日

秋の雨

去るときは去るべく見えて秋の雨

むちやぶり

むちやぶりとむしやぶりどこかでつながつてるやうな気がするたとへば乳房

2012年9月23日日曜日

フローレス人

過去もなく未来もないとふフローレス人の小さい脳に帰らんいつか

冷たきしぶき

重き窓開くれば冷たきしぶき来て降りこめらるる秋とは知りぬ

2012年9月22日土曜日

ダウランド

ダウランド聴きつつ思ふ この世には悲しみほどの美はなからんと

墓前の青年

祖父母とともに逝くめり少年の彼も墓前に立つは青年

2012年9月20日木曜日

鍵の感触

失せし鍵のその感触をおもふなへゆく足元にその鍵ありぬ

2012年9月17日月曜日

嫌悪の種

冷静か無関心かはわからぬが嫌悪を組織する者はゑむ

2012年9月16日日曜日

のど自慢

若きころなぜか嫌ひしのど自慢みて思(も)ふ かの我すでにあらずと

ひとつの音

違和感のしだいにひとつの音となり慌てて外の干し物しまへり

2012年9月14日金曜日

やせてますか?

その女(ひと)はやせてますか?と女らに問へばいいえと細きが云へり

夜蜘蛛

一匹の夜蜘蛛を殺しき二人して子のことに倦み果てて殺しき

2012年9月13日木曜日

日本語守れ

日本語が現地語となる日にはそを嘆く難し言葉も消えん

群がる鯉

流れ来し西瓜の欠片に大きなる鯉ども群がりつつきて去れり

2012年9月12日水曜日

満員電車

ややあつて声あることを思ひ出す満員電車を抜け出た後で

朝の電車

輸送船の兵士の顔つき見知らねどかくやと思へり今朝の電車に

2012年9月4日火曜日

可能性の生

可能性としてありけん人生も己が生なら死は日々増せり

2012年8月31日金曜日

小指の指輪

退職の後に会ひたる男性に小指の指輪のいはく問はれき

2012年8月26日日曜日

しばし浮かべる

船底に穴あき持ち物みな棄ててしばし浮かべるごとく、母臥す

2012年8月24日金曜日

家への道

家への道みな閉ざされて泣きまどふ己にあひて夢よりさめぬ

2012年8月23日木曜日

川の流れ

川に立つ足首さらりと水流る流るるものは若きにまどふ

2012年8月22日水曜日

死せる蝉

捨てられし玩具のごとく死せる蝉 もつたいないなあまだつかへさう

2012年8月21日火曜日

子の行く末

子の行く末心配ですといふ母の心配の行く末心配せずや

2012年8月20日月曜日

顔写真

新旧の運転免許の顔写真 五齢といふことあるやもしれぬ

視力検査

そのたびに「よく見てください」と直されて老人やうやく視力検査了ふ

免許更新

五年目の免許更新めぐり来ぬ、不作為こそが優良たると

2012年8月17日金曜日

きそふとには

きそふとにはなけれど若者あとより来(き)、われより先に用たして去(い)ぬ

死にゆく蝉

腹みせて死にゆく蝉も死にし蝉も、むらがる蟻にはちがひはなくに

採血

採血のときには眼(まなこ)そらさずに針先をみる 死にもかくと

谷保

谷保といふ駅名告ぐるに運転士やっほと軽く促音いれたり

2012年8月16日木曜日

神の眼

ゑひさわぐときにし泣きふす人ありて地上あまねくみるこそ、神か

2012年8月15日水曜日

妬心

妬心てふ世にも不思議な感情に心もゆだねてただ泣くわれかも

森の人

わが胸を力強くも打つ人にさながらわれら森の人と化す


2012年8月13日月曜日

みづすまし

そのかげのつつと動けば水面(みなも)にはみづすまし夏の光をゆけり

2012年8月12日日曜日

王さまと家来たち

王さまと家来たちとがさいごには大わらひして、この世も果てなん

トニー滝谷

直線と直線交はりあひ離(か)るるごとき孤独のトニー滝谷


2012年8月11日土曜日

黒蝶

ダフニスとクロエのやうな恋などもあらんか黒蝶むつみて飛べり

2012年8月10日金曜日

深大寺のむくろじ

深大寺のむくろんじの実なま青きままに落ちたる黙(もだ)して執りぬ

多摩川のひぐらし

いにしへの多摩川の底へ森々にしらべを鳴きつぐひぐらしのこゑ

野川のかはせみ

南海のコバルト色の羽ふりてかはせみ一羽野川に舞ふも


2012年8月9日木曜日

夏つばめ

悲喜などのあるとは知らねど夏つばめ白き腹見せ飛びまはりたる

榎の葉守

木陰から木陰へ移ればそれぞれに葉守のごとき蝉ゐて鳴きぬ

榎とつばくろ

榎からふいにつばくろとび出でて我を巡らせ円弧描けり

2012年8月8日水曜日

怨憎会苦

ひとたびは睦みしゆゑに怨憎会の苦もまた深きや問へども見ぬは

卓球女子

日本の卓球女子の勝ちしぐさその握る手の乙女めきたる


2012年8月7日火曜日

新しい町

忌々しい町めと毒づく越してきてゆく道ゆく道みなゆきどまり

夕焼

この町で初めて出逢ふ夕焼に昔の少年寄り添ひ涙す

2012年8月6日月曜日

少年老いやすく

ほんたうの家族探して家出せし少年老いやすく家族に逐はる

2012年8月4日土曜日

脱兎のごとく

わが横を脱兎のごとく自転車で浴衣の女子が駆け抜く闇へ


2012年8月2日木曜日

預言者の眼

北京にてロンドン視えしと預言者の眼もちたる競技者云へり

転送未了

目醒むればここはどこかと問ふなへに転送未了といふ声すなり

ギネス青年

ギネス飲むためにダブリンまで行きし青年ふだんは梅酒を飲むと

2012年8月1日水曜日

東京の原野

生(き)のままの原野を見たし東京の地膚を掩ふ諸々剥ぎて

すつぴん

何千年へなばや街をゆく夏のはなやぐ彼女らすつぴんとなる

クレーン

夏雲の流るとみえてよく見れば聳ゆるクレーンゆるかに動けり

死期

死期といふはかくなるものか夏午後のあらがひがたきこの大睡魔

うなさるる夢

うなさるる夢をまた見き思へらくいつたい誰がうなしてるのかと

2012年7月31日火曜日

素性

淡々と己の素性を問はるるにみぬちに怒りのごときをおぼゆ

かすみさう

かすみさう君と分けしがその強きかほりはつひに寄す処となりぬ

2012年7月28日土曜日

心の闇

もうよさう心の闇と云ふ物語<心理>ではなく<反応>を語れ

李徴のやうに

俺もまた李徴のやうに君に告ぐこの人格はやがて死すと

最後は

いづれにしても最後はさうなるさうするかさうなるだけかの違ひにすぎぬ

夏の睡魔

こんなにもつぎからつぎへとわいてくるため息ではなく夏のあくびは


風見鶏

吹く風の止まると見れば風見鶏飛ぶか落ちるか地球を提げて


凌霄花

暑さゆゑ昼天動くは人ならず凌霄花に蟻せはしなく


2012年7月26日木曜日

分別

いつどこで失つたのか身のかるさ分別などは一種の肥満さ


酒盛り

女発ちその空席はそのままに男らふたたび己が酒飲む

2012年7月25日水曜日

別名

時来ればかの人の名字名乗らうと決めしその名で生くるもありや


すつぴんの人

すつぴんの人の面貌みなれしや わが面(つら)のごとくかなしくも見ゆ


2012年7月24日火曜日

ダークナイト

ひたぶるの<ナイト>を嗤ふ<ジョーカー>に<笑ふナイト>などあらばやともふ


別れの夏

昨夏は友らが去りぬこの夏は恋人去るめり よく寝よ息子

水風呂

一対の尻が降り来る水風呂の我の横手に淑女のごとく

2012年7月23日月曜日

最愛の人

最愛の人を見捨てて戦乱を逃れし夢見き その人知らずも


夏休み電話相談室

ラジオから舌足らずの子のカガク・ソーダン聞こえてまさしく夏休みかな


霧雨の夜道

霧雨にけぶる夜道に自転車のライトは逸らしてすれちがひゆく

2012年7月22日日曜日

光の車窓

夜をゆく電車明々(あかあか)内部(うち)さらし押絵のやうな人々が過ぐ


2012年7月19日木曜日

へくそかづら

やいとばなへくそかづらにくそかづら しかして茶席の早乙女かづら


高校野球実況中継

めづらしとおもふ 女声の高からぬ高校野球実況中継

2012年7月18日水曜日

くまぜみ

ちかごろは湘南あたりもくまぜみが鳴くとふ しやあしやあ西の夏


去年の蝉

さういへば去年は蝉がいつまでも鳴かず地変の余波などと言ひき

初蝉といふか

ぢぢと鳴きそのまま黙ししあの蝉はけふは鳴けるや恋せよ男子

2012年7月17日火曜日

夏夕べ

うだる夏の一日も終るこの夕べ微酔のままに「葡萄木立」読む

男の愉悦

ある人のいふやう男は写すことを愉悦とするとふ 歌人も変態も

2012年7月16日月曜日

熊谷直実

弓矢丸直実汗して習ひしや熊谷けふも猛暑日といふ


合歓の花

はたと知る色気のやうにいつも知る 葉かげの合歓のうす紅のいろ


エゴノネコアシ

エゴノキの虫こぶエゴノネコアシにはエゴノネコアシアブラムシ棲む

ひたぶるのかなぶん

ひたぶるのかなぶん樹液に身をおつ立て可笑しきまでの忘我にありぬ


2012年7月15日日曜日

ささやかな至福

人の身のささやかなれど至福なる一時 夏の夜風に恋ふるは

ヒツグス粒子2

よい風にをみなら軽やかほんの少しヒツグス粒子を失ひしやも

ヒツグス粒子

ヒツグス粒子は我らに纏はる天使とか うべ死に際は光の見ゆる


2012年7月13日金曜日

昔の歌

深夜ラジオの昔の歌に目瞑りぬ人の最期も耳だけだとか

おやすみ

おやすみと誰に言おうかあなたへの一本の糸 電網にありや

2012年7月12日木曜日

老いの手

手の老いは隠さふべしやきれいな手と誉めし義母なくその手も又なく

2012年7月10日火曜日

夏の孤愁

空よりも儚き予感に身震いて今朝より始まる夏の孤愁


2012年7月8日日曜日

蚯蚓

いつぴきの蚯蚓まつすぐ這ひ来たり上げたる足の置き場に迷ふ

七夕の雨

銀河など夢のまた夢 微小なる蟻に生まれて七夕の雨


書架の本

数十の図書分類で事足らん我が書架の本 わがペルソナなど


2012年7月1日日曜日

長寿の福音

医師達が教祖のごとく福音を説く 長生きなどが救ひとなる世に

2012年6月18日月曜日

成りそうで成らぬ

成りさうで成らぬは夢ともうつつとも笑顔で語りて真顔で去りぬ

2012年6月15日金曜日

最後の二人

淋しさか安堵か定めがたきまま見送る最後の二人とならず

2012年6月14日木曜日

柔きレバー

語りあふ夜はふけゆきて夢ならぬうつつのごとくレバーは柔し

2012年6月12日火曜日

我もまた夢に

逢ひたるは夢見の人かとからませし小指をなづる まどろみの床