2012年9月23日日曜日

フローレス人

過去もなく未来もないとふフローレス人の小さい脳に帰らんいつか

冷たきしぶき

重き窓開くれば冷たきしぶき来て降りこめらるる秋とは知りぬ

2012年9月22日土曜日

ダウランド

ダウランド聴きつつ思ふ この世には悲しみほどの美はなからんと

墓前の青年

祖父母とともに逝くめり少年の彼も墓前に立つは青年

2012年9月20日木曜日

鍵の感触

失せし鍵のその感触をおもふなへゆく足元にその鍵ありぬ

2012年9月17日月曜日

嫌悪の種

冷静か無関心かはわからぬが嫌悪を組織する者はゑむ

2012年9月16日日曜日

のど自慢

若きころなぜか嫌ひしのど自慢みて思(も)ふ かの我すでにあらずと

ひとつの音

違和感のしだいにひとつの音となり慌てて外の干し物しまへり

2012年9月14日金曜日

やせてますか?

その女(ひと)はやせてますか?と女らに問へばいいえと細きが云へり

夜蜘蛛

一匹の夜蜘蛛を殺しき二人して子のことに倦み果てて殺しき

2012年9月13日木曜日

日本語守れ

日本語が現地語となる日にはそを嘆く難し言葉も消えん

群がる鯉

流れ来し西瓜の欠片に大きなる鯉ども群がりつつきて去れり

2012年9月12日水曜日

満員電車

ややあつて声あることを思ひ出す満員電車を抜け出た後で

朝の電車

輸送船の兵士の顔つき見知らねどかくやと思へり今朝の電車に

2012年9月4日火曜日

可能性の生

可能性としてありけん人生も己が生なら死は日々増せり