病院帰り

降る雪や黒を掘り出すショベルカー

ふる雪やこれでいいのだと言ひ聞かせ

雪の町ゆつくり通ぎる黒い川

不運の人

寒月や不運の人は嘆くのみ


壁は君を押しつぶそうとするけども僕らの祈りは絶たれはしない

戦乱の世界に僕らも銃口を向けよう祈りの銃弾込めて

生き死にのあはひ

生き死にのあはひに似たり寒苺

こんな日本

水仙やこんな日本にした一人

落葉風

いつか来たやうな四辻落葉風

雪安居

吐く息はこの世から来る雪安居

兜橋

枯山やあらはれ渡る高速道

寒々し名のみ残れる兜橋

parece frío
só o nome permanecido
ponte Kabuto

寒の入り

毎年よ心の冷えも寒の入り

目が覚めて終点と知る寒の入

手毬唄

ブラウスに細い手足に手鞠唄

スカートの中のボールや手鞠唄

旧街道

松取れて旧街道の道狭し

小寒

小寒や雨ふり風ふき国ふるふ

初仕事

太箸や女系で続くもの多し

草臥れて職場に着くまで初仕事

大山街道（厚木）

石のごと鴨も丸まる相模川

今日だけは旧街道も初詣

名にしのふきりんど橋の三日かな

初富士や工業団地一人ゆく

ところ狭き田舎車の三日かな

初寝覚め

百年の衰亡のやうに初寝覚め

持てる者持たざる者も初寝覚め

元旦

年立つやホモ・エレクトスの心意気

年立つやタイムラインが人の世に

御降りや貧は風流ならぬ世に