2013年11月13日水曜日

雑感-「『時間』の克服」(平野啓一郎)

ミルチャ・エリアーデについて。

彼は生涯3つの分野で著作活動を行なっている。
宗教史・比較宗教学、日記・自伝、そして小説である。

宗教関係の本は何冊か読んでいるが小説は未読である。
おそらく、小説にこそ彼の同時代に対するメッセージが強く打ちだされているのだろう。

・・・・エリアーデは、あらゆる実存的不安は、時間の問題に、取り分け、その西欧近代的な(遡れば、ユダヤ・キリスト教的伝統であるが)直線的かつ不可逆的な性格に由来していると考えていた。
我々の生きる日常とは、聖なるものの偽装して現れた姿に過ぎず、その聖なるものの「しるし」を発見し、絶え間なく変化を繰り返す線形的な時間から脱出して、永遠の時間を生きることこそ必要であるというのが、彼の根本的な主張である。・・・・

(p115)

近代的な直線的時間でもなく、古代的円環的な時間でもない、新たな時間論(あるいは解釈)が必要とされている。

というのは、人類文明はまさにその線形的な時間のレールの上を、まるでブレーキが効かない列車のように爆走(暴走)しているからである。