2015年11月29日日曜日

「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」メモ(3)

2年前に読んだ『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』を英訳で読んでみた。

読むと言ってもキンドルのナレーション(Audible)を聴きながら読んだのでいわば<聴読>ということになろうか。

2年前のそうだったが、いったい誰がシロをレイプし、絞殺したかということがやはり気になる。もちろん、作者が<謎解き>をしないかぎり、それは永遠にわからないことだが、主要な登場人物の中で言えばやはり、アカが一番その役に相応しいように思える。

グループの中で最後にシロを見たのはアカであり、その際に彼女がかつての輝きを失っていたことに失望している。魅力的でなくなったシロについてアカはこう言っている。

"Seeing Shiro like that was very painful. It hurt to see that she no longer had that burnig something she used to have. That what had neen remarkable about her had vanished. That the special something would no longer be able to move me the way it used to."

そして彼女の死を知った後に次のように感じたと述べている。

"Whatever the circumstances might have been, she didn't deserve to die like that. But at the same time I couldn't help but feel that the life had already been sucked out of her, even before she was physically murdered."

ここで思い出すのは緑川が持っていたという<死のトークン>のことである。ある種の力の源泉である<死のトークン>はそれを手にした者に力と才能をもたらすが、同時にその心を損ない、最後には肉体まで破壊するものらしい。

その<死のトークン>をシロが(どこで手に入れたかわからないが)持っており、そしてアオがそれを引き継いだのではないか。

<死のトークン>を失ったシロは抜け殻のようになり、それを手に入れたアカは力と才能を開花させていく。抜け殻となったシロを<始末>したのはアカ本人か、その手先から分からないが、悪霊によって変容したアカなら躊躇なく実行できただろう。

アカの言葉を信じるならばシロの命はすでに<sucked out>しており、彼はただその抜け殻の動きを止めただけかもしれない。スイッチを切るように。