2015年11月29日日曜日

職業としての小説家

村上春樹の『職業としての小説家』を読んだ。

現実の<職業としての小説家>の人たちがこの本を読んだら(たぶん読まないと思うが)どう思うのだろうか。

作者の考える<職業としての小説家>は、有機農法や無農薬などの農作物を産地直送システムで消費者に届ける農業従事者のイメージが一番近いように思う。

第10章「誰のために書くか」で作者はこう書いている。

・・言い換えれば僕は、読者とのあいだに太いまっすぐなパイプを繫ぎ、それを通してじかにやりとりをするシステムを、時間をかけて築き上げてきたということになるかもしれません。それはメディアや文芸業界といって「仲介業者」を(それほど)必要としないシステムです。そこでなによりも必要とされるのは言うまでもなく、著者と読者のナチュラルな、自然発生的な「信頼の感覚」です。・・(P265)

いわば、オルタナティブな小説家システム。